映像と書籍の資料を組み合わせて古典の理解を深める

映像と書籍の資料を組み合わせて古典の理解を深める

2022年05月13日

こんにちは。編集部のMです。薫風が心地よい季節になりました。

さて、最近『平家物語』が熱いですね。
アニメ化された「平家物語」は今春最終回を迎え、『平家物語』の舞台となった平安時代末期の肌触りを感じさせる映像美と物語で話題になりました。
【アニメ「平家物語」公式HP】
https://heike-anime.asmik-ace.co.jp/

また、『平家物語』ではないですが、現在放映中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、北条・源氏方の立場から描かれており、アニメと併せると同じ時期に源氏・平氏両方の視点から源平合戦を見ることができます。
※「鎌倉殿の13人」は、『吾妻鏡』をベースにしているそうです。
【NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」公式HP】
https://www.nhk.or.jp/kamakura13/

「古典は苦手」というお話を聞くことがありますが、大きな理由としては「その時代の当事者ではないから」という点が挙げられるのではないでしょうか。言葉も文化も現代とは大きく違うので、身近に感じられず、どこか遠い感覚を覚えてしまうのかもしれません。

この「遠い感覚」の距離を縮めるのに、映像資料はとても役立ちます。
歴史的仮名遣いで書かれた文字だけの資料が視覚化され、具体的にイメージできるようになるからです。

例えば、アニメの「平家物語」では、主人公や平家の貴族たちが琵琶や横笛などを演奏し、後白河法皇が今様をうたいます。
平安時代の人々がどんな音楽を聴いていたのが鮮明にイメージでき、身近に感じられます。

また大河ドラマでは、都に入った源(木曽)義仲が、牛車を後ろから降り、都の人々に嘲笑される場面が描かれました。
牛車の後ろから降りるということが、当時どれほどのマナー違反だったのか。これも映像化することで具体的なイメージが湧きます。

さらに、アニメやドラマのように物語化された映像の場合、登場人物や時代背景に思い入れや興味が湧くことも多いかと思います。
こうした愛着や興味から、「もっと知りたい」と自分で検索して調べてみたり、古典の教材が以前よりもすっと頭に入ってきたりと、古典の世界を「受け容れる」態勢が生まれてくるのです。
こうなると、「古典と少し仲良くなれた」と言えるのではないでしょうか。

ただ、映像資料にはこのような利点がある一方で、向かないこともあります。全体を俯瞰的に見ることが難しいのです。

例えば、アニメの「平家物語」では、平家の貴族たちが次々と登場し、台詞の中で「重盛」「維盛」「資盛」「知盛」……と名前が飛び交いますが、馴染みのない方は「○盛」が多すぎて誰が誰かわからなくなってしまうでしょう。

また大河ドラマでは、源平合戦が急スピードで展開し、いつどこで何の戦が起こったのか、混乱してしまうこともあると思います。

こうした場合は、資料集などの書籍の資料がその実力を発揮します。
平氏の家系図を見たり、源平合戦の年表や地図を見たりすることで、情報を系統立てて整理することができます。
また、書籍には前後に関連情報が掲載されていますので、興味が湧けば前のページや次のページをめくって、知識を広げていくこともできますね。

図:京都書房刊『新訂国語図説六訂版』の「平家物語合戦地図」より

このように、映像と書籍の資料の長所をうまく組み合わせることで、古典の世界をより立体的に、血肉の通った世界としてとらえることが可能になるのです。

書籍の資料としては、様々な資料が図版付きで幅広く網羅された資料集がおすすめです。
弊社の『新訂国語図説六訂版』は今年度改訂し、さらに同資料集の「デジタル版」も刊行となりました。
資料集には図版だけでなく、動画資料も多く収録していますので、紙と映像の資料を組み合わせて、ぜひ古典の世界を広めていただければと思います。

よろしければ下記リンクから、『新訂国語図説六訂版』の詳細や誌面見本をご覧いただけますので、ご参照ください。
『新訂国語図説六訂版』の詳細ページはこちら

 

追記:
コラムの原稿執筆中に、2024年のNHK大河ドラマ制作決定のニュースが飛び込んできました。
「光る君へ」というタイトルで、紫式部を主人公とした平安時代のお話になるようですね。
こちらも古典の理解を深める映像資料として非常に楽しみです。
【NHK公式HPより】
https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=34215

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国語・国文学専門の教育出版社
株式会社京都書房
https://www.kyo-sho.com
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