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令和3年度 入試雑感

新国語問題集編集委員による、令和3年度の入試傾向分析です。
第52集の解説書巻末に掲載しています。
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※以下は、入試雑感の内容を弊社編集部員が簡潔にまとめ、コメントしたものです。
※『作品名』の前の数字は、掲載されている問題番号を示しています。

現代文編(クリックで拡大)
古典編(クリックで拡大)

文学的文章

① 小説を出題する国公立大学は例年と変わっていない。

② テーマとして、死によって手が届かなくなったり、届かなくなりそうな存在への思いを読み取らせる出題が多い。
  →心情を細やかに読み取らせる設問。

  • 17『麦を嚙む』伊集院静(宮城教育大):息子の死を回想する男の話。
  • 20『トリニティからトリニティへ』林京子(大阪大)
    :被爆した筆者が原爆を生んだ実験場を訪れる場面。
  • 21『子規の夏目漱石(東京大):友である正岡子規の死を悼む心情を描いた随筆。
  • 22『すだれ越し』石川淳(京都大)
    :戦争中に直撃弾で亡くなった隣人への想いを描いた随筆。

論理的文章

① 共通テストがスタートしたものの、二次試験はほぼ従来通り

② 新型コロナウイルスの流行による時代の危機に対し、どのような発想の転換が必要であるのかを問う内容の文章が直接的・間接的に多く出題された。

〔直接的に新型コロナウイルスに関わる文章〕

  • 9『センザンコウの警告』石井美保(静岡大):出典は『コロナ後の世界を生きる——私たちの提言』。文化人類学の視点からウイルスについて考えた文章。
    最後の設問は、「身近な例を挙げながらあなたの考えを述べよ。」という本文全体を踏まえて自分で具体例を挙げ論述させる問題。(新傾向問題)
  • 16『ケアと共同性――個人主義を超えて』松嶋 健(東京大):新たな時代のケアのあり方を問う。「ウイルス」などの直接的な用語は出てこないものの、「医療」分野にあたる文章。

③ 倫理・文化・制度・情報・哲学などといった人間のあり方の本質を問うものは、例年通り多く出題。

  • 1『気持ちよさという罪』村田沙耶香(千葉大):真の多様性を問う文章。
  • 3『感性文化論 〈終わり〉と〈はじまり〉の戦後昭和史』渡辺裕(岡山大)
    :1964年東京オリンピック時の「国際化」と、現在の「国際化」の違いにおける文化の多様な可能性について論じた文章。
  • 10『心にとって時間とは何か』青山拓央(神戸大)
    :「責任」の基盤となる「倫理」のこれからを問う文章。
  • 12『経験をリセットする 理論哲学から行為哲学へ』河本英夫(東北大)
    :未曾有の事態に直面した際に哲学に何ができるかを考察する内容の文章。

古文

① 説話や軍記物、擬古物語の出題が減少し、有名作品からの出題が増加。(昨年からこの傾向に。)

  • 1『更級日記』(山梨大)、3『十六夜日記』(岡山大)、6『徒然草』(千葉大)、7『蜻蛉日記』(名古屋大)、9『大和物語』(筑波大)、13『大鏡』(九州大)、14『落窪物語』(東京大)、16『栄花物語』(京都大)

 新傾向問題の出題も見られた。

  • 4『文照聞書』『古今和歌集』真名序・仮名序(北海道大)
    :「文照聞書」に関わる『古今集』の仮名序と真名序が短く引用されており、3つの文章で構成されている。両者に対応関係があることを読み取る必要がある。 

漢文

① 本文の分量は少なめ、難易度は易しめで、例年どおり。

② 記述の量は昨年同様少ない。まとめる力を求める問いが多い

③ 句法・用法に関する問いが増加。再読文字・反語・使役などの例年頻出のものだけでなく、受身・仮定・限定・比較・選択・比況・抑揚など幅広く出題あり

④ ジャンルは物語が減少し、論理的な文章が増加

  • 随筆・評論:18『世説新語』(大阪市立大)、19『朋党論』(鹿児島大)、20『論語』(大阪大)、22『闇然堂類纂』(東北大)など
  • 歴史的文章:17『唐国史補』(新潟大)、『資治通鑑』(香川大)など
  • 説話的文章:『古鏡記』(滋賀大)など

⑤ 複数文章による新傾向型の問題も出題された。

  • 20『琴操』『論語』(大阪大)
    :関連する2つの文章で構成。「論語」の文章の趣旨を踏まえた上で、「琴操」の文章での孔子の対応の理由を答えさせる問題。

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