新教科書「古典探究」の言語活動の調査

新教科書「古典探究」の言語活動の調査

2022年07月28日

こんにちは。編集部のYです。
京都では、三年ぶりに行われた祇園祭の山鉾巡行も終わり、いよいよ夏本番という様子になってきました。

さて、本年度スタートした「現代の国語」「言語文化」に続き、来年度からは新課程「論理国語」「文学国語」「古典探究」が始まります。
今回はその中から、指導要領「古典探究」に新しく追加された内容に関連して、新教科書ではどのような言語活動例が設定されているかを一部ご紹介します。

「古典探究」のご参考にはもちろん、前段階である「言語文化」の活動のご構想のヒントにもなれば幸いです。

※以下、緑字は文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説」から抜粋、下線箇所は新指導要領での追加部分になります。
※黒字は各教科書での活動例を要約したものです。また、指導要領のどの項目に対応するかの分類は、京都書房編集部によるものです。

〔知識及び技能〕
(2)ウ 時間の経過による言葉の変化や,古典が現代の言葉の成り立ちにもたらした影響
について理解を深めること。
・古今異義語について、古語から現代語への変化がどのように生じたか、経緯や理由を考える。(三省堂)
・古語と現代語の「美」に関する語を集め、多様性や意味の違い、その社会的理由を考える。(明治書院)
・仮名のもとになった漢字を考えながら、くずし字を解読する。(文英堂)

〔思考力,判断力,表現力等〕 読むこと
ウ 必要に応じて書き手の考えや目的,意図を捉えて
内容を解釈するとともに,文章の構成や展開,表現の特色について評価すること。
・同じ出来事を語る「大鏡」「栄花物語」の間で、内容や語り方にどのような違いがあるかを考える。(数研出版)
・平家物語を題材とした古典・現代作品を調べ、『平家物語』を継承した部分と、新たに創作した部分・改変した部分を区別し、どのような意図で創作や改変が行われたかを考える。(三省堂)
・「王昭君」をテーマに描かれた複数の絵画を分析し、どのように解釈されているかを考える。(筑摩書房)
・『史記』と「木曽の最期」を比べ、登場人物の表現の類似点を考える。(大修館書店)
・自分なりの「ありがたきもの」を文語で創作する。(東京書籍)

作品の成立した背景や他の作品などとの関係を踏まえながら古典などを読み,その内容の解釈を深め,作品の価値について考察すること。
・当時の有名な伝承から外れた結末を持つ「夕顔」について、当時の読者がどう受け止めたと思われるかを考える。(第一学習社)
・近世の商人や流通事情について調べ、『鹿の子餅』「蜜柑」の背景となる状況を理解して読みを深める。(明治書院)
・『源氏物語』桐壺、『枕草子』「木の花は」、謡曲「楊貴妃」が、「長恨歌」をどのように踏襲しているかを調べる。また、「長恨歌」に基づかない発想や設定を確認し、相違が生まれた背景を考える。(明治書院)

オ 古典の作品や文章について,内容や解釈を自分の知見と結び付け,考えを広げたり深めたりすること。
・「方丈記」の学習後、ハザードマップを見て、地域の災害の歴史を調べる。(文英堂)

ク 古典の作品や文章を多面的・多角的な視点から評価することを通して,我が国の言語文化について自分の考えを広げたり深めたりすること。
・「平家物語」についての評論を読んだり、平曲の演奏を聞いたりして、「平家物語」に対する理解を深める。(桐原書店)

ほかにもさまざまな活動例が掲載されていますが、全体的には、複数作品・資料を比較することで、表現の特徴や作者の意図を掴んだり、歴史的背景を理解して読みを深めたりする活動が多く見られました。
以前のコラム「共通テストの複数資料問題」でも触れたとおり、現代文共々、入試問題にも同様の傾向があります。

この変化からは、古典に「今を生きる」ための価値が見出されているように感じられます。

例えば、現代とは異なる価値観で書かれた作品に触れる際、どのような社会背景の中で書かれ、当時の人々にどう受容されてきたかを調べて読み深める。この力は、現代で必要とされる、「異なる多様な価値観を(共感するしないは別にして)理解する力」と共通する部分があります。

また、今年一月の共通テストでは『増鏡』『とはずがたり』を題材に、書き手の意識の違いを問う設問が出題されました。上でご紹介のとおり、新教科書でも同様の活動は多く見られます。

「一方向からの視点での記述」といえば現代社会ではあまりよしとはされない傾向がありますが、文学の世界ではそうとは限りません。
『枕草子』に定子の不遇な生活は記されず、輝かしい日々だけが記されるところに清少納言の強い思いが感じられるように、視点の偏りに込められた思いや社会情勢を味わえるのもまた、古典文学の面白さでもあります。

目まぐるしい時代ですが、新課程でも様々な作品に触れ、広く深く読み解くことを通して、現代を豊かに生きる力をつけていってほしいと願っています。

 

さて、新課程といえば、昨年度改訂の「ポイント書く解くマスター古典1 二訂版」「同 マスター古文1 二訂版」は、全30課のうち12課にサブテキストや資料を備え、より深く・多角的に文章を捉えられる設計になりました。
また、付属ノートでは「探究学習」として、本書の内容や解釈を自分の考えと結びつける小問も掲載。「作品を評価する」練習を積むことができます。

今秋以降には「マスター古典2」「マスター古文2」も追って新課程に対応し、パワーアップしての発行を予定しています。ぜひご利用ください。

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国語・国文学専門の教育出版社
株式会社京都書房
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